星の琴線*きおくのきろく

ときに濃厚に、ときにふんわりと。感じたまま見たままに綴る空想的ノンフィクション。

果たされた約束

久しぶりに訪れたその場所は

 

彼が主として近隣のものたちを治めていた土地だった。

 

 

足を一歩踏み入れると、もうそこには旧知の顔たちが両脇にずらりと、

恭しくも喜びに満ちた表情で並んでいた。

 

「よう戻られました」

 

目に涙を浮かべているものさえあった。

 

それはそうだろう。

 

人では無い彼らは主のいない場所で、

主からの「この土地を守れ」といういいつけのままに

いつ終わるともわからない時の中で、

ただただ主との再会を待ちわび過ごしていたのだから。

 

「すまなかったね」

 

柔らかな暖かさを感じさせる笑みで、彼は答えた。

 

人では無いが、人のように熱を持ち

時に姿カタチを変えながら存在する彼は

 

この土地を、人々を、流れを心から愛していた。

 

「待たせたね。約束を果たそう」

 

彼の言葉で、人で無いものたちは任を解かれ

これまでの「清算」をし、「終焉」を迎え、次元を移行していった。

 

見送った彼は

しばし海や風の昔語りに耳を傾け語り合い

 

愛した土地を、友を、時を後にし

 

 

自らも、解けてひとつとなっていったのだった。

 

 

 

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