星の琴線*きおくのきろく

ときに濃厚に、ときにふんわりと。感じたまま見たままに綴る空想的ノンフィクション。

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

打たれた杭は自分で抜いて自分で持っていく

ここに来たのは もう何度目かもわからない この星の片鱗が誕生したばかりでまだカタチも定まっていなかった頃、 様々な種族が入植し、こぞって実験を始めた頃、 打ち捨てられ 流刑地となった頃、 そのずっとあと。 あらゆる層で あらゆる姿で関わった。 そう…

ある晴れた日に

ふと見上げた 空と風の間に 透明に広がる福々しく 柔和な笑顔と目の奥に宿る 決して 甘くはない光 初めて出逢う顔と歩きながらやりとりをするのは 求める手助けと それに対する断りとならばと 差し出される引き換え案件にでしたらと 返す 最終条件 互いの対…

深い海

深い海がある。 濃厚なエネルギーに満ち 羊水のように 温かく けれども 生命の律動が希薄な 海だ。 纏わりつく宇宙(ソラ)のような静けさの中を ついとこのセカイの住人が渡っていく。 圧の存在を感じさせないほどに優雅にその身を翻して。 この音の無いセ…

船にて寛ぐ

もともとクルーの多い船では無かったが 今はほとんどいつも独りだ。 居る場所も、大方決まっている。 心地よく整えられあえて「生活感」という不必要かつ 「本来は無いもの」が導入された場所で寛いでいることが多い。 外では嵐が吹き荒れていた。 その中に…

重なるとき

彼と重なるとき 私は彼の内にあるのではなく 彼の大きさのままに 自身を感じ 確かに自分の温もりの範疇ではない もっと深く 安らぐものに 全身を包まれている クリック♪応援していただけると励みになります☆彡 にほんブログ村

狭間より問うもの、天より奏でるもの

彼は…彼は今、自分には何ができるのだろうとどうすればいいのだろうかと。考えに考えている。 狭間にいるものとして狭間世界にいる自分と同じくするもの達のことを思い、どうすればいいのかと助けを求めるように 天に、自分の内に息づく今では兄のように感じ…

漆黒に広がる

どこまでも 静寂だけが支配する世界。 その空間に 彼は広がり 存在した。 広大な空間に、核を持たない光としてそれを響かせ そんな自分に満足もしていた。 周囲にはときどき、澄んだな水面に落ちる滴のように、まだ儚げで無邪気にふるふると全体を震わせ輝く…

命懸け、ということもある

命懸け ということもある。 彼は自分のシップにある、白い部屋にいた。この船の「回復室」であり、中心部の近いところにある。つまり、彼自身の中心近くにあるということだ。船は彼自身なのだから。 白い部屋にポツンと出現している縦長な空間に彼は横たわり…

果たされた約束

久しぶりに訪れたその場所は 彼が主として近隣のものたちを治めていた土地だった。 足を一歩踏み入れると、もうそこには旧知の顔たちが両脇にずらりと、 恭しくも喜びに満ちた表情で並んでいた。 「よう戻られました」 目に涙を浮かべているものさえあった。…

草原にて

腰くらいまでに伸びた草がいちめんに広がっている。 どこまでも青々とした草原と その上を渡る爽やかな風が このセカイの全部だ。 ところどころ、なだらかな丘になっていて 時折そこに寝転がって眠ることがある。 誰にも邪魔されない 僕の密かな楽しみだ。 …

竜使いの防人

ゴツゴツとした岩に覆われた大地 たまに突き出る 山も 乾き赤茶けた色をしている。 その星は小さく 彼が竜に乗り飛べば、僅か二日で全てを見て廻ることができた。2日という単位もまた、ところによりその長さを変えるのだが。 辺境の地であるそこで、彼は守り…

13番目のセカイ

彼がその窓から覗いているのは 13番目のセカイだろうか。 「 まあそれにしても 随分と育ったものだねえ 」 既に在るものは 厳密には決して消えてしまったりはしない。 痕跡は、必ず残るもの。 どうしても無かったことにはならない。 影響はついてまわる。 …

希望とは冗談みたいなもの

何度眺めても同じものとしか思えない けれども今しがた届けられた新しい報告書の束を 無造作にテーブルに放り出し、 いつものようにその上で足を組んで大きく伸びをする。 彼のいるセカイは、どこの軸にも行く事が容易く、 彼自身はそれを得手としていたため…

駆ける彼

彼の別名は 韋駄天、もしくは strider(足早に大股で歩く人)なのではないだろうか。 というほどに、彼はその広い活動領域をいつも駆け抜けている。 神出鬼没。 どこにでも、行く。 プロジェクト全体の中で、 細かく分かれた段階を管理、運営している…

ヒーラー

白い砂 細かい泡に縁どられた水際に 彼は立っていた 足首に茶色い標識が巻き付いている他は 何も身に着けていない 彼は一日に数回この浜を訪れ 身についた 不浄というにはまだその予感ほどの 汚れのようなものを洗い流すのだった 華奢でありながらも長身で …

繋がるもの。同期し動くもの。

この世界では ソラを飛ぶ事は容易だった。 それができるものにとっては、だが。 意識を、ほんの数ミリ動かす。いや、その必要すらない。 飛びたい。そう思う前に、既に身体はソラの中にあった。 彼は、 浮き上がった一瞬の静けさが好きだった。 其処には、平…

風吹く懐かしの丘の上で

そこは 一時的保護の為に用意された場所だった。 自分はどれほど眠っていたのか。 随分と永いときが流れたようだ。 そのままでは彼と云う欠片は、 全体の中から消滅してしまう程のダメージを受ける事が懸念され、 打開策が出るまで凍結されていたのだ。 そう…

律する者の

彼女の欠片たちは押並べて、その人生を一族の為に捧げていた。 それは時に、統べる者の責務であったり、 仕える者の義務としてであったりとその立ち位置は都度変化したが、 結局のところ彼女の犠牲の上に彼女の在する集団が消滅を免れたり、延命されたりした…

風の中の古の装置

この星での調査も 今までにこなしてきた多くのものと差異は無く、 なるべくその星に適したカタチで なるべく少ない人数で(今回は2名 )降り立ち、 調査しデーターを持ち帰るというものだった。 相棒と、幼い姿でその役目をこなしているうちに 彼はあること…

水晶の星

そこにあるのは 鉱物のような形態の ものたちだった。 動かず、時にほのかに揺れる光を放ち 音もなく歌うように声をかけあう。 そんな存在が、このセカイの住人だった。 彼らは 彼女たちは 動かず自ら何かをするという意志をあまり持たないため 容易く採取さ…