星の琴線*きおくのきろく

ときに濃厚に、ときにふんわりと。感じたまま見たままに綴る空想的ノンフィクション。

ヒーラー

 

白い砂    細かい泡に縁どられた水際に

彼は立っていた

 

足首に茶色い標識が巻き付いている他は

何も身に着けていない

 

彼は一日に数回この浜を訪れ

身についた 不浄というにはまだその予感ほどの

汚れのようなものを洗い流すのだった

 

華奢でありながらも長身で

髪は薄い色で肩の下まで伸び 肌は白く美しく 

涼やかな面に控える瞳は 透明な光を放ち静かだった

 

彼はヒーラーだった

 

乞われるままに

人に、生き物に、空間に、事象に

癒しを施していた

 

いつの頃からだろうか

 

人々が

自ら癒すことをやめ

繰り返した実験の結果 

ヒーラーとしてのみ生まれ存在し早くに去って行くものに

全ての癒しの力を託すようになったのは

 


 

そうして  

ヒーラーとしての能力だけに特化して

つくられ生きる彼は

ほとんど言葉を発することもなく

ただうっすらと口元に静かな笑み浮かべ

この浜の白い砂よりも

縁どられた泡沫の白さよりも

深淵な白い世界を

見つめ続けているのだった

 


終わりのときが来るその瞬間まで

 

 

 

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